林真理子『愉楽にて』 感想
2018年11月16日出版、
林真理子の『愉楽にて』の感想です。
1.この本を買った経緯
キリオの家の近くの書店で売れ筋ランキングでピックアップされていて
目に留まりました。
ハードカバーの本は値も張り、嵩張るだけでなく、文庫とは違い面白さを担保されていないので普段は買うことはないのですが、美しい装いと帯の文章に惹かれて購入を決意。
⇩これが帯の内容
美と恋に生きる名家の男たちは、
書物を愛でるように、女と情を交わし、
自由になるために、女から愛を求める。
東京・京都・シンガポールを舞台に、家柄にも資産にも恵まれた50代の男たちが、甘美な情事を重ねていく、その果てに――
特に、現代日本の名家の50代の男たちがどのように女性と関わっているのかということが気になりました。
2.本の内容
帯の内容通り、僕の期待通り、上流階級の人々の暮らしや情事模様が描かれています。大人の建前とか本音の内面も描かれています。
上流階級のエリートたちの教養の深さ、優雅な立ち居振る舞いも必見ですし、女性の方も誘い方から別れ方までレベルが違います。
ページ数、話数、ボリューム、共に多いので普段触れることのない上流階級の世界観に十分に浸ることができます。
3.本の感想
自分の力を大きく超えた大人の怖さを感じました。そしてそんな人たちも結局は酒と女(と久坂は学問) が空いた楽しみだというのは衝撃でした。
なんだか、人間は結局どんな立場や才能に恵まれようとも生物としての欲求に従って生きなくてはいけないような気がして少し怖くなりました。
でも彼らも決して獣のように酒や女をあさっていたわけではなく、
礼儀や作法、階級とかといったものを(僕からしたら)少し鬱陶しいくらい
しっかりしてるんですよね。特に久坂の観察眼、審美眼や教養は獣の対局に位置しているといっていいと思います。
とにかく、僕が思ったのは
人間としてのクラスが違うと”やっていること”は同じでも
”やりかた”が違うのだなと思いました。
4.この本から学んだこと
大人やエリートは怖いということです。(田口のような人を除き)彼らはいつもうまいこと言ってきます。そして、こういう人たちが社会の上流で事を動かしているのだなと思いました。世の中のリアルの一端を除いてしまったような気がします。
「自分の頭で考えることが大事」とか「人の意見に流されてばかりではいけない」と
言いますが、本当にその通りだと思いました。
こういう人がたくさんいるともなると、
如何にもな経歴で有名会社の重役の人が「若者はかくすべし」とか「もっとがんばろう」なんて言いますが、それも結局は自分自身の楽しみをより豊かにするためであって、僕たちのことを本気で思って言ってくれている人は少ないんだろうなとも思いました。
そして自分自身ももっとうまく立ち振る舞えるようにならなくてはなと思いました。
胸の内では人の欠点に気付きながらも、その人の美点ばかりを褒めてあげるとか。